by 生産振興課
会議名:第41回 家畜人工授精優良技術発表全国大会
日時:2月14日(木) 9:00〜15:30
場所:東京都港区新橋 ヤクルトホール 2階大ホール
全国AI大会が14日に開かれまして、管内から「FAC活動 根室管内における乳牛の繁殖改善活動について」をテーマにJA道東あさひ別海支所の栗栖津奈樹氏が西川賞を受賞されました。発表内容は以下のとおりです。
〜FAC活動 根室管内における乳牛の繁殖改善活動について〜
I.目的
・FAC活動のFACとはField(現場)、Advice(助言)、Consideration(検討)の頭文字をとった活動であり、人工授精師が現場で農業者と検討し、助言できる様に人工授精師の育成を目的とした活動である。
II.繁殖改善の方法
・牛の卵巣・子宮(一部)から牛(全体)を見て、未受胎牛のホルモン剤利用による対処から飼養管理改善による疾病の減少、繁殖改善を図るために授精師、普及員、本会職員が次の調査、検討を行い対象農家への改善案の提案を行った。対象農家、調査方法等は以下のとおり。
調査期間:平成23年10月から平成24年9月まで
対象農協:管内農協7授精所
対象牛:各対象農家の2産以上の泌乳末期から乾乳後期の牛5頭計35頭
調査方法:(1)体重測定
(2)BCS
(3)ルーメンフィルスコア
(4)分娩後10日間の体温
(5)分娩状況と分娩後疾病
(6)乳検データ
(7)授精状況等
III.調査結果と改善案提示
・不受胎牛は体細胞が3カ月高く、乳房炎、低カルシウム血症、第四胃変位、ケトーシスも多く除籍率も高かった。
※図1参照
・不受胎牛は分娩前の体重が重く、分娩後の体重の落ち込みも大きく、分娩後1カ月目の乳脂率も4.6%と高かった。また、分娩間隔が長くなると肥満になる傾向がわかった。結果、分娩後の受胎が遅れ、不受胎といった悪循環になる可能性がある。
※図2、図3参照
・受胎牛は乳タンパク・乳唐率・P/F比が分娩後3カ月間高く推移した。
・受胎牛、不受胎牛ともに分娩1カ月後の乳量は差が見られなかった。
・調査結果等を踏まえ、乾乳牛の管理について以下の二つを対象農家へ提案した。
(1)乾乳牛が給餌場へアプローチし易い様にパドックを整備してはどうか。
(2)乾乳後期牛へ専用の配合飼料給与を行ってはどうか。
・同じく搾乳牛については以下の三つを提案した。
(1)餌寄せ回数の増加を行ってはどうか。
(2)BCS、マニアスコアを観察、判断し配合給与量を調整してはどうか。
(3)飼料設計の見直しをしてはどうか。
IV.結果
・提案を実施してもらった結果、次の改善点が見られた。
(1)胎盤排出時間が短くなり、分娩間隔も短縮した。
※図4参照
(2)乳量の増加、乳成分の向上が見られた。
※図5参照
(3)低カルシウム血症が減った。
V.まとめ
・以上の結果をふまえ、次の三点が受胎に大きく関係していることがわかった。
(1)分娩前の太りすぎは体脂肪動員が行われ、ケトーシスや脂肪肝の原因になるため適度なBCSにすることが大切である。
(2)受胎牛が乳蛋白質が高かったため、飼料充足が受胎に大きくかかわっていることがわかった。
(3)分娩後、乳房炎や産孰期疾病に罹患した牛は受胎率が悪化し、分娩前後の移行がスムーズにいった牛程、受胎率が良いことがわかった。
・今後は、これらの成果を他の授精師にも普及し管理改善から受胎率を向上させるのがこの活動の目的である。
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