by 生産振興課
1.「マイコプラズマ性乳房炎」〜農場への進入を防ぐためにできること〜
講師:酪農学園大学 准教授 樋口豪紀 氏
(1)マイコプラズマはどこの地域でも発生する
・2012年で国内発生率1.29%、米国で5〜10%
(2)感染後の被害規模は、対応の早さで決まる
・最初の1頭を見つけ出す事が最重要
(3)マイコプラズマは他の乳房炎菌と異なり、別な病気も引き起こす
・子牛の中耳炎
・子牛と成牛の肺炎
(4)最初の1頭を見つけるためには、以下の症状に注意する
・泌乳量の急激な低下
・泌乳が短期間で停止
・乳房が急激に小さくなった
・異常分房乳房に大小のしこり
・複数分房に感染が広がる
・一般細菌検査で陰性になる
・同様の症状の同居牛が多発する
(5)疑わしい牛への対処方法
・隔離、または搾乳順番を最後にするのが最優先
(6)バルク乳が陽性となった場合の対応
・疑わしい牛を速やかに隔離(最重要)
・マイコプラズマの菌種を特定する
・全頭検査を実施する
・獣医師と相談して、治療牛と淘汰牛を判別する
(7)感染経路
・肺炎や中耳炎の子牛の鼻汁を搾乳機器に付着させてしまう(ヒトによる感染)
(ボビスは健康な子牛でも10%、肺炎の子牛なら40%から検出されるが、成長と
共に免疫能力で死滅することが殆どである)
・市場導入牛が感染していた(ウシによる感染)
・自家育成の初妊牛が感染していた(ウシによる感染)
(8)感染拡大の要因
・搾乳機器を媒介として感染が拡大する
(乳頭口から70個の菌が侵入すると感染が成立する)
(9)予防策
・日常的な牛群観察(随時検査、分娩後検査等)
・定期的な牛群監視(定期検査、バルク乳スクリーニング検査等)
(10)バルクスクリーニング定期検査
・定期的に検査することで、感染牛の早期発見に繋がる
・感染が見つかっても、早期対応が可能となる
・全頭検査よりもコストが安い
(11)バルクスクリーニング定期検査の注意点
・サンプルを採取した日の搾乳牛を記録しておくこと
(バルク乳が陽性になった場合に、全頭もれなく採材するため)
(12)根室管内でのスクリーニング検査開始
・25年4月から全農協にて年間3〜6回のスクリーニング検査を開始する
・バルク乳は北酪検で、菌種同定検査は家保で行う
・バルク乳が陽性となり、病原性の強い菌種だった場合は、NOSAI獣医師の指示の
元、全頭検査を実施して陽性牛の治療や淘汰を行う
<まとめ>
マイコプラズマは感染力が強く病原性の高い病気であるが、バルクスクリーニング定期検査を行うことで、感染拡大を抑える事が出来ると考えられる。
この検査に加えて、導入牛や初妊牛の分娩後検査を行うことで、感染拡大の危険性を更に抑えることが出来るので、25年度4月以降の検査体制の中で、分娩後検査をどの様に取り扱うかも検討していく必要がある。
2.「乳牛の肢蹄の実態と改善方策」〜根室管内の肢蹄調査結果〜
講師:根室農業改良普及センター 田口主査
添付資料「siteikaizen.pdf」を参照。
3.「乳牛の行動から考える牛舎設計」
講師:根室農業改良普及センター 横田専門普及指導員
添付資料「einoukaizen.pdf」を参照。
4.質疑応答
(樋口准教授への質問)
(1)ボビスの牛が見つかった場合に、搾乳を中止するべきか
→搾乳順番を最後にして欲しい
それが無理なら、搾乳のたびに消毒剤でミルカーを殺菌して欲しい
(マイコプラズマは殺菌剤に弱い)
(2)他の乳房炎のように、発熱等の症状を見せるのか
→マイコでは発熱等の症状を見せない
(3)血液からマイコへの感染を検査できるのか
→血液検査はできない
導入牛は、分娩後の乳汁検査しか出来ないのか
→現状では、その方法しかない
(4)マイコが発生した際の牛舎環境の消毒はどの程度必要なのか
→隔離した牛群には、石灰等での消毒を行うが、牛舎全体の消毒は必要ない
(5)重篤な症状を示した牛はどの様に治療していくのか
→全身治療、乳房治療などの方法があり、日本には治療薬がある
しかし、マイコは治療後の再発率が他の乳房炎よりも高いので注意が必要
(6)バルク検査で陽性、全頭検査で陰性となった場合はどの様に対応すべきか
→基本的には、経過観察(定期的なバルクスクリーニング)しかない
全頭採材時に牛が移動していた、乳頭が渋くて搾乳出来なかったなどの事象が
あると、全頭検査の結果が陰性になる危険性がある
(7)乳房炎牛の初乳を子牛へ与える場合、気をつけることはないのか
→加温して殺菌してから与えれば問題ない
(8)子牛の鼻のマイコで初産牛時の感染を判定できないのか
→どの月齢で乳腺へ移行するのかが判っていないため判定できない
(9)複数の菌種が見つかることはあるのか
→家畜市場からの導入牛が多い農場では起こりうる
複数の菌種が見つかった場合は、治療不可能となる事が多い
(10)全頭検査後の経過観察(モニタリング)はどの様に行うべきか
→毎月の検査を1年間を目安に行うのがよい
この時に、分娩後検査を合わせて行うと効果が高い
(田口主査への質問)
(11)分離給与とTMRの農家間でどの程度肢蹄の善し悪しに差が出るのか
→どちらの給与方法でも、粗飼料を食い込む前に濃厚飼料を食い込んでしまうと、
ルーメンアシドーシスが発生する原因となり、肢蹄が悪化する
(12)資料P10での分娩後日数100日以内の受胎率が0%だったのは、肢蹄以外にも問題
があったのではないのか
→集計した農場は3戸と少ないが、これが事実であり、肢蹄の悪い農場にはこの事
実を踏まえて欲しい