第72回北海道家畜人工授精技術研修大会が去る10月13日（木）〜14日（金）にかけて開催致しました。参加者17名、当管内より6題の研究発表を行いました。

と　き：平成28年10月13日(木)〜14日(金)
ところ：札幌市　ホテル　さっぽろ芸文館
参加者：223名（うち根室管内参加者17名）

No.5『ホルスタイン種育成牛における目視による発情発見に基づいた性選別精液凍結精液の人工授精適期』　根釧農試 古山啓祐　氏
・正常な卵巣周期を持つホル育成牛延144頭を供試牛とし、発情発見（1日3回）を行った。
・ホル育成牛では『早朝に発情が確認されれば当日午後〜夜の授精』『午後に発情が確認されれば翌朝』『夜に発情が確認されれば翌朝早朝〜午後の授精』がそれぞれ性選別精液の授精適期であると推察。

No.13『根室管内における性選別精液の最適な交配の検討』　改良部会 外舘翔太 氏
・年々性選別精液の使用数が増加している。これは後継牛確保に専念する生産者の増加とクラスター事業の積極的利用が主な要因だと思われる。
・未経産・経産を合わせた受胎率は通常精液で39.3％、選別精液で38.9％となり選別は通常にも劣らない受胎率であることが判明。
・一部の地区では後継牛は確保されている結果となり、その結果に基づき、より後継牛確保に繋げることも良し、黒毛和種精液を使用しＦ１牛生産で更なる経営安定に繋げるも良し、後継牛確保しながらＦ１牛生産するも良し、というように色んなパターンがあると考えられる。

No.23『授精師から発信できる定時授精の検証』　ＪＡ中標津 友貞直 氏
・供試牛は中標津町農協管轄の17農場で飼養されるホル未経産牛94頭
・オブシンク群、シダーシンク群、シダー＋ＰＧ群の3群に分け、乳量、産次数、授精回数を調査し排卵率と受胎率を比較検証した。
・排卵率は各群ともに差は無いが、受胎率は各群乳量に有意差があり、シダーシンク群が優位に高かった。
・繁殖成績を向上させるための選択肢の一つとして定時授精の積極的利用も視野に入れてよいと思われる。

No.26『ヤマネテック製ＹＴガンの試作品カテーテルカバーを装着した時の受精卵移植成績の比較』　ＪＡけねべつ　中條匡晃　氏
・ヤマネテック製ＹＴガン使用によりＪＡけねべつでは受胎率が向上傾向にあるが使用時に違和感を生じるため改善があると感じていた。今回は使用感を向上させた試作品カテーテルカバー（以下、改良カバー）を使用し、移植成績を比較検証した。
・体内受精卵では改良カバーが64.6％、従来のカバーで39.7％と改良カバーが有意に高い。また、体外受精卵でも改良カバー47.1％、従来のカバーで17.2％と高い受胎率を示した。
・未経産・経産で調査しても改良カバーの受胎率は有意に高かった。
・冬季の体外受精卵受胎率はよくないが、改良カバーについては受胎率が下がることはなかった。

No.27『根室管内における長期不受胎牛に対する追い移植の検証』　ＥＴ部会 齋藤琢
・ＡＩ受胎率29.1％、追い移植38.6％であり、追い移植はＡＩよりも効果的である。
・産次数が少ない牛不受胎牛には追い移植は有効な手段である。
・追い移植はＡＩよりも季節に関係なく安定した受胎率を示した。
・春から初夏にかけては受胎率が高いにも関わらず実施頭数が少ないので、この時期に追い移植を積極的に推奨することで、長期不受胎牛対策には効果的だと考えられる。

No.28『中標津町農協における不受胎牛対策および牛群改良を目指した農場採卵を活用した取組』　ＪＡ中標津 高橋孝嘉 氏
・血統・能力・ＳＮＰ検査により採卵牛を選定し未経産・経産合わせ23頭から採卵した
・採卵された受精卵を不受胎牛へ移植することにより不受胎牛対策とともに牛群改良効果も得られると仮定を立てた。
・移植受胎率42.5％、ＡＩ36.6％でありＡＩに比べ、移植の方が受胎率が高い結果となった。
・移植によって生産された18頭のうちＳＮＰ検査を行った3頭全てが優良次世代牛と判定。
・今後も牛群改良と不受胎牛対策の同時進行ができるよう事業推進したい。

優秀賞
(1)；『根室管内における長期不受胎牛に対する追い移植の検証』
ＪＡ中標津　友貞　直　氏
(2)；『ヤマネテック製YTガンの試作品カテーテルカバーを装着した時の受精卵移植成績の比較』
ＪＡけねべつ　中條匡晃　氏
(3)；『中標津町農協における不受胎牛対策および牛群改良を目指した農場採卵を活用した取組』ＪＡ中標津　高橋孝嘉　氏

上記3題は2月に開催される『全国優良授精技術研修大会』に参加されます。