by 情報事業課
≪ イギリス ≫ 9月25日
EASTROP FARM
午後、ロンドンより車で西に1時間ほどにある
EASTROP FARMでの視察研修を実施した。
本農場の農場主はデブル氏といい、祖父の代に就農した
ので彼は3代目となる。
EASTROP FARMは1996年よりオーガニック農場として
運営されている。
オーガニックとは有機栽培の意味で、化学合成農薬や
化学肥料に頼らず、有機肥料などにより土壌の持つ力を
活かして栽培する農法である。
EASTROP FARMは生乳・肉・大麦・小麦・大豆などを
生産しており、これら全てがオーガニック製品となって
いる。
EASTROP FARMはおよそ400haの土地を所有して
おり、飼養頭数は乳牛180頭、肉牛120頭であり、基本
的に牛をよそから導入する事無く、乳牛・肉牛共にここ
で全て育成している。
集荷した生乳・肉に関してはOMSCO(オーガニック協同
組合)という団体と業務提携をしており、全てここに
卸している。
オーガニック製品である基準とは主に2つ。
(1)ヨーロッパで設けられた基準を満たしている事。
(2)ソイル・アソシエーションというイギリスの有機生産物
の検査・認証機関の設ける基準を満たしている事。
(化学肥料・農薬の使用不可。家畜の疾病治療も予防
注射を用いない特殊な手法を用いる)
EASTROP FARMの飼養牛については、全てフリージア
ン種であり、乳肉兼用牛として存在しているが、どちらか
と言えば肉に適しているとの事。
年間約一頭当たり乳量が約6000リットルであり、オーガ
ニック製品として出荷・販売される訳だが、イギリスに
おけるオーガニックミルクの需要は正直低い。
それは、オーガニックミルクは通常製品よりも価格が高い
ため、一般層が購入する事が少ない。
イギリス国民は健康志向よりも価格が安い方がいいと
いう考えが根強いようである。
一方、他のヨーロッパ諸国では近年、オーガニックミルクの需要が高まってきており、
ヨーロッパ諸国に輸出もされている。
1リットル当たりの乳価は通常の生乳が27〜29ペンスに対してオーガニックミルクは
34ペンスである。
EASTROP FARMに関しては、オーガニックに係るコストがリットル当たり30ペンスは
かかっているとの農場主の弁であり、決して儲けがあるとは思えない。
現実には国からの補助金(土地に対する補助金)、普通農場からオーガニック農場に
移行した場合に出される補助金(2年間のみ)、EU(欧州連合)から出される補助金
等、助成によって成り立っている感じであった。
EASTROP FARMの圃場については、主体草種はペレニアルライグラスであり、マメ科は
赤クローバーが主である。
他にアルファルファや実験的にメドウフェスクを導入した事もある。
その他、日本では耳にしない草種も聞かれた。
他の視察先でもそうであったが、チモシーは殆ど使用されない様である。
繁殖については、まき牛が一頭だけ居たが、殆どは人工授精である。
搾乳形態は1日1回搾乳であり、パーラーに1ユニット18頭入る事ができ、それが2ユニ
ットある。
雇用形態は4〜5名従業員を雇用しており、給料は2週間で約700ポンドである。
そのうちの一人は記録係として乳量・乳成分のデータを独自で分析している。
その他問題点として、ロンドンに比べて雨量が多く草の出来に影響を及ぼす事や、
アナグマが出没する事による伝染病の蔓延などが挙げられた。
総括として、先にも書いたが国やEUからの助成があって初めて運営が成り立つような
厳しい状況である事は理解出来た。