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平成25年 根釧農業新技術発表会

by 情報事業課

会議名:平成25年 根釧農業新技術発表会
日 時:平成25年2月26日(火)
場 所:根釧農業試験場 講堂

(1)「根釧地区における極早生とうもろこしの安定栽培技術」
 道総研 根釧試験場 飼料環境グループ
  根室管内は牧草地帯であるが、とうもろこし栽培が増えてきている。病害や障害を防ぎ
 ながら安定性の高いサイレージ用とうもろこし栽培技術を確立させるために試験を実施
 し、下記のことがわかった。
  ・栽培の密植は病害の原因とは無関係であることがわかった。
  ただし、耐病性に優れる品種(たちぴりか)は12,000本/10aを上限とし、それ以外の
  通常の耐病性を持つ品種は8,000本/10aが上限である。
  ・圃場ごとに品種を変える方法と同じ圃場の畦ごとに品種を変える方法とでは病害の緩
  和、収穫量にはあまり差はない。
  ・1つの品種が病害にかかっても他の品種をまきこむことはない。
  ・簡易耕栽培は病害が多かったが、プラウ耕栽培とでは最終的な収量の差はあまりな
  い。品種については極早生品種を使い、耐病性に優れる品種と複数使用することで作物
  が倒伏を防ぐことができる。また、簡易耕栽培法を利用すれば、低コスト省力化技術と
  して利用できる。播種については8,000本/10aを原則にし、病害の早期発見に努め適期
  収穫を行う。


(2)草地更新時におけるリン酸施肥量の新しい算出法
 道総研 根釧農業試験場 飼料環境グループ
  草地造成・更新時のリン酸施肥は牧草の定着と初期の生育に効果があるが施肥量算出方
 法は1971年から見直しがされておらず、適正な施肥管理やコスト削減を図るために根室管
 内・宗谷管内の35圃場で調査を実施した。
  根釧地方の草地更新における土壌中のリン酸含量は1974年〜1980年に3mg/100g
 であったものが、2006年〜2010年には20mg/100gまで推移しており、従来の算出
 方法による下限値20mgを下回る施肥量で充分に賄える圃場が多数であることがわ
 かった。
  新しい算出法はリン酸含量を5段階で示し、従来の下限値を撤廃。
 これによりリン酸だけで判断すると約25%〜30%の低コストになり、播種時期の遅れなど
 による牧草生育量が著しく低かった事例を除くと80%の収穫量が確保できた。この算出法
 は地帯、土壌、草種を問わず適用できる。
  次回の施肥ガイド改正に採用されることが見込まれており、現在の施肥ガイドに記載が
 なくても新しい算出法の推進をしていく。


(3)飼料用とうもろこしに対する連用時のふん尿肥効評価と施用上限量
 道総研 根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ
  飼料用とうもろこしは連作されることが多く、ふん尿の散布が毎年行われ、生産性を維
 持しながら、環境に配慮したふん尿の散布方法の確立が重要である。
 そこで、散布上限量を設定する。
  とうもろこしの連用2年以降で堆肥・スラリーともに1年間の散布基準値を上回ることが
 多く試験結果も踏まえ、連用5年以降のふん尿由来の窒素(肥料換算係数)を春散布堆
 肥、スラリー散布、秋散布堆肥の別に設定した。
  一般的な施肥条件(リン酸利用率)を考慮してふん尿中のリン酸(肥料換算係数)を堆
 肥、スラリーともに0.6と設定した。
  カリの施用上限量は根釧地域では10aあたり20kgでありこの数値を上回ると草地転換を
 行った後の牧草品質の悪影響が懸念される。
 以上のことから圃場への散布上限値を換算し、最小値を上限とした。
  →中標津町での一般的なふん尿成分を換算するとカリが制限されるため、散布上限量は
  10aあたり堆肥で4t、スラリーで5tとなった。


(4)酪農家が実施可能な削蹄技術
 道総研 根釧農業試験場 研究部 乳牛グループ
  酪農家が実施できるよう、削蹄方法を簡易化して削蹄テキストを作成する。
 また、この方法で分娩前削蹄を実施することで蹄病の防止、乳量の増加に及ぼす影響を調
 査。
  ダッチメソッド法という削蹄方法の一部改正したものを活用し、削蹄講習会を開催。JA
 の青年部の方々を中心に80名程度の参加があった。参加者の意見を反映して、削蹄に必要
 な道具や肢蹄モニタリング方法、蹄病などについての記載も加えたテキストを作成した。
  ※テキストは根釧農業試験場のHPで掲載する。
  22ヶ月齢未満と22ヶ月齢以上の牛群の中から3肢以上が変形した牛を比較し、頭数の調
 査を行った。22ヶ月齢以上の牛群で21頭中11頭の蹄が変形がみられた。このことから育成
 時の削蹄は分娩前1~2ヶ月が適正であると判断した。
  分娩後15週までの非削蹄牛と削蹄牛とを蹄病診療頭数で比較すると非削蹄牛が27.3%、
 削蹄牛が9.1%で早期からの削蹄で悪影響はなかった。また、同じ牛群で平均乳量を比較
 すると非削蹄牛が1日あたり27.5kgに対し、削蹄牛が1日あたり32.1kg、乾物摂取量の大
 差はなかったが、分娩後8~9週目には多い傾向があり、採食時間も多く推移していた。
  →分娩15週までは1頭あたり26,000円の増収が見られた。(初産での調査)
 ※削蹄時にグラインダーを取り扱う場合は、「グラインダーの特別教育」を終了する者で
 なければならないので、注意する。


(5)根室管内における乳牛肢蹄の実態把握と改善方策
 根室農業普及センター
  乳牛肢蹄実態把握のため普及センター、管内JA、根室生産連と連携して根室管内の25
 農場1,681頭を飛節スコア、蹄冠スコアともに5段階に分け設定、モニタリング調査した。
 ・肢蹄の健康な牛は全体(25農場)の53%
 ・肢蹄の状態が悪い農場は良い農場と比較して生産、乳質、繁殖の成績が高くなかった。
 ・TMR利用農場でも選び食いがされており、同農場で調査したところ分娩後99日までに受
 胎した牛が1頭もいないことが明らかになった。
  スコアリングで肢蹄の状態把握に努めて定期的な削蹄を行い、牛体を清潔に管理する。
 牧草収穫時の切断長は10mm〜13mmを目安に25mm以上のものが25%含まれていること。
 給与した飼料はどの時間帯でも選び食いがないかを把握し、それによる栄養の過不足を
 チェックすることが重要。


(6)生乳生産費集計システム
 道総研 根釧農業試験場 研究部 地域技術グループ
 道総研 十勝農業試験場 研究部 生産システムグループ
  酪農家、JA職員、普及指導員が農水省の農業経営統計調査に準じた生産費を集計できる
 牛乳生産費集計システムを開発。
  Excel上で生乳の生産費を集計するシステムで下記の二つから構成されている。
 ・自給飼料費用価集計ファイル:計算期間の前年度データの入力で飼料作物の費用価を出
 力。
 ・生産費集計ファイル:入力データを該当費目に仕訳し、実搾乳量100kgあたり、搾乳牛
 通年換算1頭当りの生産費が出力。
  入力作業の重複ミスを防ぐため営農摘要コードごとにクミカンデータを転記する機能を
 持たせており、自動表示される用途と作目の欄に「1」、該当しない費用に「除外」を入
 れることで耕種部門を有する酪畑経営でも算出を可能にしている。
  酪農家等が農水省の農業経営統計調査に準じた生乳生産費を集計するために活用し、
 自身の投下費用の特徴、重量あたりの生産費に生じた要因を把握することができる。


(7)TMRセンターの収益実態と収益安定化方策
 道総研 根釧農業試験場 地域技術グループ
  酪農経営とTMRセンターの経済状況とその要因、TMRセンターの持続安定化に必要な事
 項を明らかにする。
  TMRセンターは財務基盤が弱く自己資本比率は高くても10%程度である。機械更新費用
 の捻出が課題で税引き当期純利益への課税回避やTMR単価引き下げ圧力から内部留保は
 進んでいない。さらに、当初計画を下回るTMR販売により、総資本や流動資本が減少
 し、運転資金不足や信用力不足による資金調達の困難化が懸念される。
  酪農経営とTMRセンター、酪農経営間相互の情報共有、共通指針の設計・実施体制の構
 築が必要となる。


(8)持続的農業生産システムの確立
 釧路農業改良普及センター 釧路中西部支所
 課題設定の背景
 ・離農地の取得および借地の増加により、農用地の散布
 ・頭数規模拡大に見合う労働力確保、施設投資が不足
 H24年度の活動内容
 ○自給飼料の計画的生産
 ・採草地植生の改善  ・サイレージ用とうろもこしの集約的生産
 ○飼養管理体系の改善支援
 ・生乳生産量の向上  ・繁殖成績の改善
 今後の対応
 ・高品質自給飼料確保に向けた支援を行い、サイレージ用とうもろこしの病害発生回避に
 向けた取り組みを強化。
 ・繁殖成績改善のための施設改善支援、規模拡大農場へ増頭に対応した飼養管理支援の
 取組


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