根室生産農業協同組合連合会 業務ブログ

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労務管理に優れた農業法人から学ぶ

by 企画管理課

と き:平成25年10月7日、8日
ところ:十勝管内

はじめに
 10月7日から2日間にわたり、十勝管内で多数の従業員を雇い農業法人を経営して成功を収めている2戸の牧場(会社)を視察し、現在多くの経営者が課題視している労務管理について、どう対応しているのかお話しを聴くことができた。
 1件目は搾乳頭数が730頭、H24年度出荷乳量が8,400トンを超す大規模農場にお邪魔した。ここでは酪農のほか肉牛や畑作も経営しており、従業員を多く雇用している会社である。

1、雇用方法はネット等も利用した全国公募。
 経営者によると、農業経験者は自己の経験に拘るため方針に合わないと長続きしないことが多いが、新卒の農業未経験者は余分な知識や経験がない分、作業をどんどん学び良く働いてくれると述べていた。

2、従業員を育てるのは従業員。
 新人従業員を育てるのは先輩従業員の役目であり、発生した問題の解決策を導くための話し合いも従業員同士で行わせている。その方が自分たちで考え行動できる従業員に育つし、作業や方針を後輩に正確に伝達できる人材になる。一番してはいけないことは、経営者が横から口を挟み従業員の自主的行動を阻害することである。

3、従業員の生活を保障。
 労働力に見合った賃金を設定することが大前提である。また、休日や昇給の設定、社保や中退共の加入、寮・社宅の設置、各種手当(賞与・責任者手当・扶養手当・通勤手当・増産手当等)を設定し、従業員の生活を保障することが大切である。

4、働きやすい施設・環境づくり。
 機械車両で作業しやすい広い作業スペースを確保することも働きやすさにつながる。こうすることで、事故防止や操作技術獲得を図ることが可能となる。また、牛舎内の清掃業務や飼料の掃きよせなども機械化することによって、従業員の肉体労働軽減につながり、作業スピードのアップにつながり、働きやすい職場につながっていく。

5、その他
 インターンシップへの取り組みや農の雇用事業などを利用し、就農・研修希望者の受け入れ等にも積極的に取り組んでいる会社としてアピールしている。(申請書類・手続きを面倒と思っていては何も進まない。)また、通常の農業経営にはない人事異動と人事考課を実践している。

 2件目は経産牛頭数が500頭、H24年度出荷乳量が4,500トンの大規模農場にお邪魔した。従業員数はパートを含め13名を雇用している。また、この経営者は近隣農場と共同で「哺育預託組織(従業員4名)」も運営している。
経営者によると、1件目の会社同様、作業のプロセスは従業員自身に考えさせる方針をとっている。やらされている感を取り除くことでモチベーションを上げている。また、従業員の生活を守ることを最優先に考えた保障としている点も1件目と同様であり、違うのは特別手当に該当する「増産手当」が「生菌手当」「ジュース手当」等になっている程度である。
従業員の大半は会社設立当時から継続して勤めている従業員であることからも、信頼関係が構築されていることがわかる。

まとめ
 今回2件の農業法人(会社)を視察して感じたことは、会社の利益を上げることは勿論、会社として従業員の生活を守るために何をすべきかを経営者が親身になって考えている点である。
職を求める側も自分たちの生活を確立させるために職を探しているのだから、求める条件からかけ離れていれば初めから選んでもらえない。少なくとも従業員になる人側の立場になって、労働力に見合った賃金や社会保障等を設定し、情報開示することが必要であると感じた。
 もう一点は、従業員が自ら課題解決に取り組んでいる、或いは従業員同士で改善点を話し合っている際、経営者が口を挟まない点である。
 従業員が自ら取り組んでいることに経営者が口を挟み内容を変更することは、従業員の自主性・積極性を否定することと同じであり、モチベーション、やらされている感、不信不満につながる。一般企業において、社長ではなく上席が部下を指導するように、従業員内で解決できる内容であれば、先輩従業員(責任者)から後輩従業員に働きかけることが望ましく、その結果を見て解決できていれば「よくやった。」と言葉をかけてあげ、失敗したら俺に任せろと後始末するのが経営者の大役であると感じた。
 賃金が安く労働もきつい。でも社長の方針に従業員がついていく企業もあれば、好条件なのに半年で辞めていく企業もある。上述してきた内容を踏まえると、最終的には経営者の「ひとがら(温厚・篤実)」これに尽きるのかもしれない。


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