by 情報事業課
≪ イギリス ≫ 9月25日
レディング大学(University of Reading)
(1)レディング大学の農業科の概要
Arborfield・Shinfieldという2つの農業科があり、それ
ぞれ580ha、180haの土地を有している。
Sonning farmという育成施設があり、そこでは350頭
の育成牛が飼育されている。
CEDAR LANDという酪農牛の土地があり、約560頭
ほどの牛が存在し、そのうちの200頭は研究に使われ
ている。
学生は17000人。大学生55% 大学院生45%
学生は基本的に理論のみを習得し、現場作業等は授業
では取り入れられていない。
また近年、環境問題、メタンガスの排出量を減らすため
の研究や乳成分の脂肪の悪い部分を減少させる研究を
行っている。
バイオガスプラント等の研究に着手する予定は今の
ところ無いとの事。
レディング大学は農業・食糧関係のリサーチ(研究)では
トップクラスの大学であり、国の資本で酪農関係のリサー
チがされている。
(2)レディング大学の飼養・生産状況
1年間の生産量は約540万リットル。1頭当たりの年間
乳量は9700リットル。
FAT:3.8 PRO:3.1 妊娠率:37%
肉用牛は地方に売られていく。
デイリークレストと言う乳業会社と業務提携を結んで
おり、こちらに集荷している。
小売価格:リットル当たり27〜32ペンス。
平均産次:3産 乳房炎・蹄病で廃用となるものも多い。
1日2回搾乳で群分は特にしていない。
圃場の主体草種はペレニアルライグラスであり、チモシ
ーはこちらでは使われない。
ロンドンは雨量が少なく、乾燥のために放牧が中々難しい
ようであるため、夏も牛舎に入れている時間が多い。
但し、受胎牛のみ外で草を食べさせている。
(3)イギリスの酪農情勢
イギリスは国土の約70%が農業用の土地であり、その内穀物関係が50%で牧草地が20%
である。
牧草地は1年〜5年位使われる。
また、イギリスは東側が良い土地で主に畑作に使われる。
中心部は酪農と畑作が半々で使われ、西・北部は主に牧草地帯として使われているが、
雨が多く有効活用は難しい。
家畜の頭数は乳牛180万、肉用160万、豚450万、羊1500万、鳥1億6000万
農家の戸数は22万3千で土地の平均の広さは78haである。
(ちなみにフランス56ha、ドイツ48ha)
農業に携わる人は46万5千人程存在し、農場主・奥さんが65%、雇用労働者35%
雇用労働者の40%フルタイム、22%パートタイム、残りは季節労働者である。
農業従事者の平均年齢は59歳とかなり高齢化が進んでおり、30歳以下は僅か3%にすぎな
い。
農業雇用減少の問題に対し、政府も施策を講じている。(助成体制など)
天候はロンドン等東側は雨量が少ないが(年間700ml程度)、北部や西部ではこの夏は
雨量が異常に多く、家畜の草に大きなダメージを与えた。
日本と同様、1戸当たりの頭数は農家戸数と反比例して増大しており、1995年には70頭
だったのが、2011年には100頭に増大。(ちなみにEU平均は31頭)
また、1戸当たりの平均乳量も1995年には5300リットルが2011年では7500リットルと
増大。
利益の高い農家はコストも高く、コストを惜しまないからこそ利益も高いと言える。
よって大規模農場程、利益も大きく持続性も高い。
このような頭数増、生産量拡大が行われた背景には政府による農業政策があり、
イギリス政府から所有している土地の広さ(ha)に応じた補助金が出される。
またEUからも農家全戸に対し一定額の助成が出され、それを基に規模拡大、
頭数・生産増が行われてきたと言える。
唯、イギリスは日本と同様面積が狭く、ロンドンを中心に人口密度も高いため、酪農家
の臭気などの環境問題も深刻なようである。
また、年間26000〜30000頭程廃用に追いやられるが、主な要因としては野生動物
(アナグマ)からの伝染病の感染である。
その他、イギリスの特徴としては、農家全戸中の8〜9%はオーガニック(有機栽培)
農家として、無農薬、無抗生物質の有機性の高い製品生産を行う農家が存在する。
オーガニック製品は品質的には人体に優しい健康的なものであるが、それだけに価格も
高いため、景気の良くない現在のイギリスの一般国民、特に低所得層は購入が難しい
現状がある。