根室生産農業協同組合連合会 業務ブログ

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根室乳牛検定組合連合会主催の講習会について

by 生産振興課

根室乳検連主催の講習会が開催されました。

開催日時:平成24年10月12日 11時〜14時20分
開催場所:別海マルチメディア館
出席者:受講者は94名
講師:ホクレン帯広支所 畜産生産課 主任技師 五十嵐 弘昭 氏
 ※講義資料やアンケート結果は別添しております。

(午前の部)11時〜12時20分
○今日からできる経営改善の取り組み
・酪農家では最近の牛は乳量が出るから繁殖成績が悪化していると言っているが、乳量階層別で見ると、高泌乳牛群の方が繁殖成績は良い。これは、農家間での牛群管理能力差が原因とされており、原因をみると多頭飼養化や牛舎施設の変更などが考えられる。
・特に低乳量階層の繁殖成績では農家間での差が激しく、逆に高乳量階層での繁殖成績はその差が少ないので平均値で見るとそういう傾向(繁殖成績の差)となる。
・低乳量階層では特に発情発見率が低く、発情をきちんと観察ができていないと思われ、そこの改善が必要だと感じる。
・飼料費が高いと言われているのは乳検成績では搾乳牛のみの飼料費に対し、農協が見るのは育成牛を含む全体の飼料費を見ている。農協から飼料費が高いと言われたら、育成牛頭数が適切であるかをきちんと確認し、判断する。
・個人的な目標はきちんと現状を見つめ、個人が設定することだが、簡単にまとめると(1)牛を殺さない(2)繁殖成績を上げる(3)出荷乳量を増加する(4)無駄な経費を使わないという優先順位でものごとを考える。
・経営改善2例での改善提案はどれも当たり前のことで実施できることを提案した。(例)水槽を毎日きれいにしましょう。一日2キロ乳量が変化します。100頭搾乳牛では2キロ変化すれば月で6トン増加→年で72トン→乳価を70円で計算しても約500万円の効果があります。水槽を洗うのに、人を採用してもいいから実施してください。と提案したところ、人を雇うくらいなら私(奥さん)がやりますと言って実施している。など
・経営改善に成功した農家が実施したこと(1)分娩後1カ月以内で死ぬ牛の頭数を減らす(2)搾乳牛の飼料摂取量を最大にする(3)発情発見率を上げる(4)育成牛を早く、大きくする
・経営の悪い農家は収入より支出が多いこと
・JAでは3カ月毎に飼料費と出荷乳量を表にして農家に提示させている。収入が同じくらいなら無駄な経費を削減する提案をする。
・収益を上げるためには
(1)無駄な経費を削減する(製品の費用対効果をきちんと確認させる)
(2)収入を増やす(出荷乳量を増加させる、個体販売を強化させる)
・要因を追及すると人が牛を悪くし、牛が経営を悪くする。解決には人が牛を悪くしないことが一番の解決策 (人の毎日の習慣(作業)を変える)
・受胎率の低下への対応→産褥期の急激な体重減少を抑制する、体脂肪の質の転換によって動因速度を緩やかにする、乾乳期・泌乳前期の吸収タンパク量を充足する、意識的に泌乳初期の産乳量を抑え込み要求量を引き上げる
・発情観察について
(1)1日2回の発情専用観察(夜明け、夕方)→ 発情発見率81%
(2)表面的(目的のない)観察 → 発情発見率43%

(午後の部)13時〜14時20分
○実際の飼養管理の要蹄
・牛はエサを食べても急激に血糖値が上がらないため生理的には満腹を感じない。しかし、正常な牛がエサを食べるのを止めて寝る時は第1胃がエサで充満したときである。(物理的満腹状態)
・牛が寝ている理由はどれだ? (1)を増やして(2)〜(6)を減らす
(1)物理的な満腹状態・・これ以上食べられないから寝ていよう
(2)給与作業への馴致・・飼槽に行っても食べられないから寝る=あきらめ
(3)ルーメンアシドーシス・・おなかの調子が良くない消化不良→寝る
(4)ケトーシス・・体が動かない(だるい)から寝ていよう
(5)低カル・低マグ・・しびれているので立つのがつらい→寝る
(6)蹄病の発生・・蹄が痛いので立つことが困難→寝る
・飼槽を見てエサを食べた後がすり鉢状になっている状態が好ましい(選び食いがされていない食べ方あと)
・飼料が少なくなってきていたらエサ押しするときに一つずつマウンドを作成してやる。そのマウンドに複数頭の牛が群がっているとエサの全体量が足りていない。
・牛は毎日同じ採食量ではない。理想は牛の採食サイクルを把握し、エサ全体量を調節してあげる。(ロスを少なく)
・選び食いの原因(1)かたい粗飼料の切断が5cm以上(2)濃厚飼料の割合を上げる(3)エサを薄く広くのばす(4)哺乳時に仔牛をいじめる。これらの条件のうち2つ以上重なれば選び食いをするようになる。
・給与量が多くエサ押し回数の多い農家は採食量が大
・給与量が多くエサ押し回数の少ない農家は採食量が中
・給与量も少なくエサ押し回数も少ない農家は採食量が小
・ルーメンアシドーシスとはPHが低下している状態で下痢などの症状があり、悪化すると起立不能や突然死などを招く→原因としては色々あるが、選び食いやかため食い、濃厚飼料過多な牛群で特に多く見られる。
・アシドーシスを判断する(1)エサの残り方(2)しっぽの振り方(3)糞の状態が挙げられる
・きちんと水を飲ませるには乳量を増加させるだけでなく、飼料の濃度を薄めるためにも重要である。
・飲水に関しての負のサイクルとして水を飲めない→乳が出ない→エサを食べない→乳が出ない
・乳房炎の原因としては牛の起き方や寝方にも原因があるので、牛床(ベット)スペースは重要である。
・牛の寝相についてはストールに対して背骨が並行になるのが理想
・歩き方スコアをつなぎ牛舎で観察するポイント
スコア2→起立直後に背中を丸める動作
スコア3→採食パターン変化、起立回数の減少、かため食いが起こる
スコア4→飛節の腫れが生じる場合が多い
スコア5→採食量の激減
・蹄浴を実施するのには効果的な蹄浴を実施させること(1)手前の蹄浴槽には洗剤を入れる(2)蹄浴槽どうしを2メートルくらいの間隔をとる(3)蹄浴剤の濃度と延べ頭数を順守する
・蹄浴剤は消石灰を用いて石灰乳を作成するときには特々選(粒子が細かい)ものを使用する。
・蹄浴を実施するときには農家に治療ではなく、予防することに意義があることをきちんと認識させ、スコア2の牛が対象であることをきちんと理解してもらい。すぐに効果が見られない→蹄浴をやめるのサイクルをつくらせず、定期的に実施させることに意味を持たせる。
・乾乳軟膏の挿し方では根本まで挿入させないことを守らせる(奥まで挿入させることでケラチンプラグを破壊させない)
・乾乳牛の飼養環境が悪化しているときにはドライオフなどを使用することで乳房炎対策に有効である。
・乾乳期間を設けるという意味は乳房炎や周産期を予防するのが大きな目的ではなく、産乳量を増加させ、その利益を得るために設けるという認識をする
・牛群レベルのケトーシスの予兆として
(1)予定日より1週間早く分娩する牛(特に初産)が増えた
(2)夜間分娩が増えた
(3)後産が半分落ちて半分残るような気がする
(4)分娩直後の潜在性乳房炎新規感染が増加した
(5)泌乳ピークが低く、持続しない
(6)パーチング姿勢と斜めに寝る個体が増えた
(7)初回発情が50日以降になった
・ケトーシスには大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれにあった対処法が必要である。(付箋(1)を参照してください。)
・乳頭のスコアリングについて乳頭状態を確認し、対策を講じる。

             まとめ
・非常に理解しやすい講習であった。別紙(2)のアンケート結果を見ても今回の講習については9割以上の方が内容について満足以上となった。しかし、時間が足りなかった、講義資料が小さく見えにくい、印刷方法についてなどに改善を要求する記載があったので、次年度以降は配慮していきたいと考える。
また、アンケートでは今一番農場問題となっている(乳房炎、繁殖が回答多数)
今後、受講を希望する内容(検定成績の見方、繁殖成績の改善が回答多数)を結果を配慮し、次年度以降の講習会内容などを乳検担当者会議を開催し、検討していきたいと考えています。

添付資料
001.pdf →今日からできる経営改善の取り組み(講義資料)
002.pdf →実際の飼養管理の要蹄(講義資料)
003.pdf →アンケート結果をまとめました。


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